【第1話】ジュエリーづくりの「よせもの」、技術の継承と革新。MASAAKi TAKAHASHi ブランドストーリー。

ひと よせもの:高橋正明
2017-01-20


アクセサリーやジュエリーの輝き。
その輝きを支える「よせもの」という技術をご存知だろうか?
多くのアクセサリーは大量生産できる作り方で製作されているものが多い中、「よせもの」は金属パーツを一つ一つロウ付けという溶接技術でつなぎとめ、一つの作品をつくる伝統的な稀少技術だ。

そんな「よせもの」の世界で、一級建築士という異色の経歴を持ち、ジュエリーデザイナーとして活躍されている高橋正明さんにお話を伺った。

高橋さんがアトリエを構えるのは下町葛飾区。
江戸切子や江戸指物などの伝統工芸や町工場で賑わうものづくりの街だ。
また、アトリエの他に「MASAAKi TAKAHASHi」の名前でショップを構えるのは「2k540」。御徒町と秋葉原の間の高架下にある商業施設で、こちらもものづくりの街の人気スポットだ。
高橋正明さんは、2つのものづくりの街を拠点に活躍する職人であり、自らデザインを手がけ、数々の展示や受賞歴を持つデザイナーでもあるのだ。


「よせもの」とは?

クリスタルなどのパーツを寄せ集めてデザインを決め、土台となる金属パーツをロウ付けという溶接方法で一つにつなぎ合わせる技法のことで、高度な技術を要する繊細さ故に現在「よせもの」の職人は少なく、100年以上続くこの技術の伝承は危ぶまれている。

「よせもの」の魅力

多くのアクセサリーは大量生産用の「型」を使い、一度に多くの完成品に近い形を作る「キャスト成形」という方法でつくられ、その中にクリスタルを接着ではめ込むことが多い。

だが、その方法では、大きなものになるほど重量が増し、大きなティアラなどになるとなんと1kgを超えることも。身につける人にとっては大きな負担となる。また、デザイン的に金属が主体となりやすく、クリスタルはそのデザインにはめ込まれた印象になるため、本来の輝きや美しさを損なってしまいやすい。

一方「よせもの」はクリスタルを留める薄くて丈夫な金属の土台パーツ一つ一つをつなぎ合わせたものにクリスタルを石留めしていくので、まず重量がまったく違う。なんとキャスト成形の場合の3分の1ほどの軽さになるのだという。

そして何と言っても金属パーツの小さな「ツメ」だけでクリスタルを固定するのでアクセサリーとしての美しさは別格だ。軽さ、美しさのどちらをとっても、長時間に及ぶ結婚式などで花嫁を引き立てるティアラには特にふさわしい。

しかし、この「よせもの」の技術を持つ職人さんは現在では都内でも数人しかいないのが現状だ。


「よせもの」はどのように作るのですか?

01 まずは型取りの準備。胡粉(ごふん)という貝を砕いた粉を練った泥状のものを皿に盛る。

02 つくりたい形に並べ「原型」をつくり、盛った胡粉に押し当てると写真のようにツメの跡が残る。


03 型取りで胡粉に付けたツメの跡に沿って金属パーツを並べ、銀ロウでロウ付けするのだが、
この時金属パーツとロウ材がつきやすくするためにフラックスという溶剤をあらかじめ塗っておく。

04 バーナーを使い、銀ロウを溶かしながらロウ付けを行うが、量や位置を間違えると意図せぬところにロウが流れてしまい台無しになってしまう。まさに「よせもの」の要となる作業だ。



05 ロウ付けが終わったら冷まし、胡粉を壊しパーツを取り出す。焦げつきや取りきれなかった胡粉は酸洗いをすることで丁寧に落とす。

06 いよいよ「石入れ」というクリスタルをツメで留めていく石留めの工程。スワロフスキーのクリスタルを一つ一つ留めていく。表現により小さなクリスタルは接着で留めることもある。

07 完成。写真は、「MASAAKi TAKAHASHi」の作品第1号である「花火 -hanabi- 」。
高橋さんが幼い頃から見ていた葛飾区の花火をモチーフにつくったという。

高橋さんのアトリエで作られる「よせもの」は主に、オーストリアの有名ブランド「スワロフスキー」社のクリスタルを使用している。最高級の輝きを誇るスワロフスキーと、その輝きを最大限に引き出せる「よせもの」技術とが合わさり、ブランド「MASAAKi TAKAHASHi」の作品を輝かせている。

「スワロフスキーのクリスタルは、ラウンドのものやひし形のものなど、数千、いや数万......数えたくないほど膨大な種類があるんです。」と、辞書のように分厚いカタログを出してくれた。

「例えば、涙型のクリスタルのとがっている方を円の中心に向けて5つ並べると花のようになったり、外に向ければ星になったり・・・クリスタルの形が頭に入っていないと、独創的なデザインはできないですね。経験の積み重ねがデザインの幅につながります。」また、高橋さんは結婚式のティアラなどのオーダーがあった際には、イラストレーターを使ってPC上で実サイズのクリスタルを配置した絵を作成して打ち合わせをし、より完成形に近いイメージを共有しながら制作を進めるという。

高い技術を持った職人というだけではない、「よせもの」に向き合う創り手としての高橋さんの想いとは。第2話では高橋さんの作品を通してその想いに迫りたい。



企画|亀岡勇人
取材|小泉優奈
撮影|榊智朗


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【高橋正明さん】

大学院まで建築(意匠設計)を学ぶ間、日本の人間国宝に匹敵するフィンランドアカデミー一員の建築家、ユハ・レイヴィスカと出会い、卒業後、フィンランド・ヘルシンキに渡り、所員として勤務する。帰国後、アクセサリーを作る技術を身につけ、デザイナーからの製作依頼や、自作デザインなどが評判を呼び、数々の出展、受賞歴を獲得し、多くの著名人、ブランドなどへのアクセサリーを手掛けることになる。
現在は、「よせもの」という技術とスワロフスキー・クリスタルを使い、コスチュームジュエリーだけでなく、ステーショナリー、ホームアクセサリーなど、様々な分野で精力的に活躍の場を広げている。


アトリエ・エイト
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