【後編】蔵前ローカルラウンジ #1 兵庫県養父市

ひと しごと もの こと ~「やぶ医者」の語源とこれからについて~
2018-04-25

こんにちは。フラクタルの菅野です。
前回の投稿で、「蔵前ローカルラウンジ#1 兵庫県養父市」でのテーマや提供した養父市の特産品「朝倉山椒」をつかった「うちのもの」をご紹介させていただきました。今回は、いよいよ「蔵前ローカルラウンジ」のメインである自治体担当者と地域イノベーターの皆さんによるワークショップの状況などをお伝えいたします!

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みなさま、この記事を見るまでに「兵庫県養父市」をご存知でしたでしょうか?
実は、今回ご来場いただいた方も含めて「知らないor名前だけならば」というのが現状ではないでしょうか。それゆえ、まずは養父市ってどんなところ?ということを知っていただく為に西田副市長より養父市の現状についてお話いただきました。

【養父市の現状】

養父市は、兵庫県但馬地域の中山間地にある人口2万4千人の都市。前回の国勢調査時と比較して8.35%人口減少しています。また、高齢化率は「36.2%」と市全域過疎地域として少子高齢化が進んでいます。

養父市を知るためのポイントとして4点ご説明いただきました。

まずは、国家戦略特区(農業特区)に認定され農業分野で様々な規制緩和を実施したこと。例えば、民間企業が農業事業に新規参入しやすいように農業委員会の農地の権利移動の許可事務を市に移行させ農地流動化促進させたり、また、農業における信用保証制度適用し第二創業や六次産業化を推進させたりと一地方都市では難しいことをこの特区制度を活用して実施しています。

観光名所としては、錫の日本一の鉱量を誇っていた明延鉱山と近畿地方最大の金山であり、特にアンチモンの産出量は日本一であった中瀬金山が日本遺産として認定(鉱山跡では初)されたり、大杉地区の3階建養蚕住宅が国の重要伝統的建造物群保存地区として認定されました。

また、養父市の特産品である朝倉山椒が、養父市100%出資会社である「やぶパートナーズ株式会社」を通じてイタリア・フランス・イギリスへ輸出するなど、第1次産業、特に農業分野における先進的な取り組みについてお話しいただきました。

養父の先人として、儒学者で「青溪書院」を開塾した池田草案、日本文化輸出第1号といわれる養蚕技術書「養蚕秘録」を発刊した上垣守国。そして、今回のテーマである「やぶ医者」のモデルとされている江戸幕府の第五代将軍徳川綱吉の奥医師だった長島的庵についてもご説明。

名医なのに、なぜ「やぶ」医者?

先程の人口動向のとおり、市全体が過疎地域であり少子高齢化が進んでいます。そして、高校卒業後の進路として都市部への人口が流出し、卒業後も地元に戻る人が少ない。そうすると、農業特区として認定されていたとしても、少子高齢化に伴う第1次産業の衰退、また、観光産業含む地域内経済の停滞などが生じてしまいます。それゆえ、養父の豊かさを体験し移住者数を増やすために、農を通じた自然と子どもたちに優しい街づくりをおこなっています。

<養父市の目標>
「農」を中心に豊かな自然環境を活かし、次世代を担う若者や女性が活躍できる社会を実現させる。

その一環として、これからの養父を支える子どもたちの為に、「結婚から出産・子育て」における福祉・医療分野では、「0歳から中学3年生までの医療費全額無料」「待機児童ゼロ」「大学進学者への奨学金(Uターン時の免除等あり)」などの将来の人口減少を見据えて各種支援を行っています。
福祉政策をはじめとして、未来の養父市の為に様々な施策を取り組んだ結果、なんと平成28年度近畿エリア住みたい田舎ランキング第1位を獲得いたしました!

そして、本日のテーマである「やぶ医者」について。
みなさんが思う「やぶ医者」ってどんなイメージでしょうか?

おそらく、「腕が悪い」「信用できない」とか、どちらかというと悪い印象をお持ちの方が多いはずです。
なぜ、「やぶ医者=マイナス」のイメージがついてしまったのでしょうか?

なるほど、本来の語源の意味は「地域の優れた名医」のことを指していたのですね。
便乗商法みたいに「やぶ医者=名医」というブランドをいろんな人が勝手につかってしまい、そのイメージが定着してしまった。この誤ったイメージが400年ぐらい定着し、現代の私たちもその意味で解釈しているというのが現状。
これからこの「やぶ」というイメージを変えていくことはできるのでしょうか?

確かに、すぐ「やぶ」医者のイメージをかえることは難しいかもしれません。ただ、この言葉の語源についてはみなさんに認識してもらいたいという副市長のお話が印象的でした。ということで、養父市では、この「やぶ医者」の本来の語源から、地域医療と地域活動に貢献している名医を本来の「やぶ医者」として養父市が応援しています。その取り組みが「やぶ医者プロジェクト」。そのプロジェクトの一環として僻地医療に貢献している医師を顕彰する「やぶ医者大賞」が創設されました。毎年、離島や限界集落等で地域医療に貢献している若手医師を顕彰しています。

最後に、西田副市長より本日のテーマである、この「やぶ医者プロジェクト」含めて「やぶ」という言葉の語源を認知してもらい、そして、「やぶ」というイメージを転換させるためにどのように付加価値をつけていくかというのがこれからの課題として、皆さんにアイデアをいただきたいとのことでした。

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西田副市長によるプレゼンテーション終了後、この「やぶ」という言葉に関する課題に対してのワークショップ実施いたしました。ここで進行をワークショップデザイナー西村氏にパス。

自治体担当者を交えて3グループに分け、まずは、今回のプレゼンについての感想共有と養父市に関する質問タイム。養父市を初めて知った方はどこにあるのか、また、アクセスは?とか基本的なところや「やぶ」医者の取り組みについての感想など、みなさん熱量高くご感想をお話しいただき、そして、いろんな角度から副市長や担当者に方に質問されていました。

今回のワークショップで改めて思ったのですが、実際に現地に住んでいると当たり前のことが東京の生活者には全く認知されていないなと。逆に東京の生活者が本当に知りたいことはどういった情報なんだろうか、自治体担当者も来場者の様々な質問に対して丁寧に回答しておりました。

この「やぶ」という言葉だけが本来の語源から意味が変遷されたわけではありません。ということで、グループ対抗で今回のテーマである「やぶ」と同じように、本来の言葉の語源とは異なる意味で認知されている言葉について、なぜこのような言葉の意味になってしまったのか、正解を探すのではなく、そのストーリーについて考えてみるグループワークを行いました。
お題は「ハッカー、確信犯、さわり」
これらの言葉って本来の言葉の意味と結構変わっているんですね。ググッてみるとすぐにわかるのですが、あえて、自分たちでその言葉の意味の変遷について考えてみる。各グループの発表では、みなさん想像力豊かにその言葉の意味の変遷のストーリーを展開し、かつ、いかにもそうだったかのようにお話をするので笑いが広がりました。

そして、いよいよ本日のテーマである「やぶ」という言葉のイメージを転換について。ひとつの考えとして、「やぶ」=「マイナスのイメージ」という現状に対し、本来の「やぶ」=「地域に貢献する優れた」という形容詞として認識してもらうためにはどうすればよいか?まずは、個人でアイデアを考え、そのアイデアをグループで共有しひとつの形として発表いただきました。

各チームとも、アイデアをセグメントして形に作り上げるのが早い。今回、地域の活動を行っている方、地域に関心のある方、また、大学生、IT、コンサルタントの方など様々な業種の方にご参加いただいており、ワークショップに慣れている方が多いなーというのが正直な感想。もしアイデアが散らばったときに短時間でひとつのプロセスを導けるよう、各グループにファシリテーターもいたのですが、全く必要がない状況でした。

各グループからは、価値をガラリと変えていくことは難しいので、養父の良さや魅力をまずは体験・体感してもらえるようなアイデアやプロセスを発表いただきました。発表のうち何個かのアイデアをご紹介いたします。

・「やぶし」反対から読むと「しぶや」
この発表があったときに会場がザワつきました。ただ単に反対から読んだだけなのですが、中山間地の一地方都市を反対から読むと常に新しいカルチャーが生まれる渋谷となる。渋谷で養父市のキャンペーンとかメディアプログラムのお話しから、「あっ。渋谷区の人(区役所のひと)しっているよ!」など有機的に繋がりそうな感じが楽しい。

・「やぶ医者」⇒「LOVE医者」
こちらも言葉の響きからのアイデア。「地域の優れた」=「やぶ」=「LOVE(愛されている=信頼されている)」としてプロモーション展開していく。

・「誤解されやすいひと大賞」
そもそも「やぶ」という言葉が誤解されているならば、「まさかこの人がこんな特技や特徴が。。」と誤解されやすい(されている)方を集めて顕彰してしまえというフリきれたアイデア。個人的には、実際に集まったらどうなるのか怖いもの見たさもある。

・「養父ッ娘」(アイドルグループ)
「父を養う娘たち」として、養父の魅力を発信しつつ、養父に来てもらうために全国で活動するご当地アイドルグループ。たぶんですが、全国にたくさんのご当地アイドルグループがあると思いますが、これほど深いテーマをもつグループってないんじゃないでしょうか。

限られた時間でのブレストになってしまったのですが、普段では思いつかないようなアイデアやプロセスが生まれ、それを様々な価値観のフィルターを通して1つの形として集積されていく。そして、何よりも、参加者の方・自治体担当者が新たに繋がり、楽しみながら、笑いながら意見を出し合っているのがとても良い空間だなと感じました。


最後に、各チームの発表内容をもとに、西田副市長から総評いただきました。

「地域の中では生まれないようなアイデアを出していただき、そのアイデアを養父市に持ってかえって施策のアイデアとして取り入れていきたい」

「1回に限らず、複数回開催して養父の魅力や地域課題に関するアイデアを共に考えていきたい」

今回、養父市の課題に対して、様々なアイデアが創出されましたが、そのアイデアを今後どのように具体化し展開していくのかが求められます。この蔵前ローカルラウンジでは、地域の課題に対してアイデアソンにとどまらず、そのアイデアをより深化させていくことができるよう、1つの自治体が複数回開催し施策として形になるような展開をしていきます。東京のわたしたちのアイデアが実際に地域の施策となって展開され、そして、地域に新しい笑顔や喜びが増えていったら素敵ですよね。

そして、養父市の第2回目は、5月23日(水)に開催いたします!

蔵前ローカルラウンジでは、地域と東京のわたしたちがつながり、そして、私たちの知らない地域と美味しく関係を持つことができる語り合いの場としてこれからも取り組んでいきます。

あっ、今回会場で使用したゲストハウス「Little Japan」さんでは、ほぼ毎日、地域、食、環境など様々なテーマでイベントを開催しています。興味のあるイベントがありましたら、是非参加してみてくださいね。

■「蔵前Local Lounge」とは
単一の地方自治体では継続的に実施することが難しい東京でのプロモーション活動の一環として、自治体の担当者が、地域の現状や課題を来場者に対してプレゼンテーションを行い、来場者と共にワークショップを通じて語り合い、地域内では生まれにくいアイデアやプロセスを導き地域課題の解決につなげていく語り合いの場。また、毎回、参画した地方自治体の美味しい特産物を「うちのもの」としてご提供し、参加者に対して地域の食文化の豊かさを身近に感じていただく。

■地域と世界をつなぐゲストハウス「Little Japan」
Guest House + Cafe/Bar + Design Office
東京都台東区浅草橋3-10-8
TEL:03-5825-4076
URL: http://www.littlejapan.jp/

■株式会社フラクタル
フラクタルのシティプロモーションは、本来あるべき地域の理想の姿から地域と共にマーケティング戦略を考え、課題解決力のあるコミュニケーションデザインを通じて効果的なプロモーション戦術を構築します。
東京都台東区蔵前1 -7-7 アイランドビル7F
TEL: 03-3866-1938 
URL: http://www.fractale.co.jp/

蔵前ローカルラウンジ担当:菅野 秀和(カンノ ヒデカツ)
福島県郡山市出身。東日本大震災を契機に地元の為に貢献できることは?という命題のもと、地域活性化コンサル会社や農業ベンチャーにて実際に地域に移住しつつ業務を行う。2017年10月より株式会社フラクタルのシティプロモーション担当として、全国の自治体に対してコミュニケーションデザインを通じた地域課題の解決への取り組みや都市部での地域魅力を伝えるために奔走中。

(本件に関するお問い合わせ先)
株式会社フラクタル
コミュニケーションデザインユニット
シティプロモーション担当:菅野 秀和
Mail:h.kanno@fractale.co.jp


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