【後編】蔵前ローカルラウンジ#4 秋田県羽後町

ひと しごと もの こと ~秋田県羽後町 「うごまち未来の学校」から始まる未来志向の地域の作り方~
2018-12-07

こんにちは。フラクタルの菅野です。
前回は、羽後町さんが「うごまち未来の学校」をマチの事業として行っているのかを中心に記事を書かせていただきました。今回は、いよいよ蔵前ローカルラウンジでの佐藤さんのプレゼンと白熱したワークショップについてお届けいたします。

この蔵前ローカルラウンジを立ち上げた理由の1つとして、地域が優れた情報を発信したとしても情報過多の時代において東京の生活者に伝えることは難しい。であるならば、いったん東京の生活者に直接伝えて、そこから発信してもらえればよいのではないか?というのが始まり。ただイベントに参加するだけではなく、せっかくならばその土地のおいしいものも食べたいよねということで、地域の特産品を少しだけアレンジして参加者の皆様にご提供しています。


今回、羽後町からは、冬でも冷かけで召し上がる「西馬音内そば」、地元の廃校を活用してつくる「おがち野チーズ」、そして、羽後町で育てられた豚をつかったジャーキー「踊っとんジャー」をご提供いただきました。そして、今回もフードコーディネーターの長谷川ちひろさんに調理していただきました。どの食事も全部おいしくて参加者の皆様にも大変好評いただきました。

そして、地元の羽後でクラフトビールをつくる羽後麦酒にもおこしいただき、3種類のクラフトビールをご提供いただきました。プレゼン開始前でしたので、参加者のみなさまお預け状態でしたが、懇親会の時には試飲していただき非常に飲みやすくておいしいとご好評でした。

●これからの世代だからこそ創りたいマチの未来

軽くおなかを満たしたあとは、佐藤さんによる羽後町プレゼンテーションの始まりです。前回の記事にもかかせていただきましたが、今回の蔵前ローカルラウンジでは、秋田県・近隣自治体・羽後町出身者が多くお集まりいただきました。東京のイベントでこれほど秋田県率が高いイベントというのも珍しいと思う。

それでも大半の方は羽後町ってどこですか?という方が殆どのため、まずは基本情報からスタート。

人口減少って世界でも日本ぐらいしかないらしいが、秋田県は少子高齢化や進学等の流出による人口減少で自治体ランキングでもトップクラス。日本の課題の先進地域、つまり、世界がこれから起こるだろう高齢化問題のトップランナーということ。羽後町も同じように高齢化や人口減少が進んでいる。

ただし、この事象に対して、前向きに解決させようとするか後ろ向きで待つかはその地域次第ということ。間違いなく20年後には羽後町が自治体として維持できなくなるのがわかる。

また、小中学校の子供たちの数が年々減っているのがよくわかる。羽後町だけの問題ではないけれども、佐藤さんのプレゼンを聞いていると時間的に待ったなしというのがひしひしと伝わってくる。仮にUターンで羽後町に戻ってきたとしても仕事はあるのだろうか?

●そもそも地域で「認められる」仕事って?

羽後町で実施した中高生向けの“しごと観”に関するアンケートを見るとマチに住み続けたい学生は半数以上いるということ。この中高生たちもマチに魅力的な仕事があれば戻ってきたいという思いがある。

このスライドって地域の現状をよくあらわしていると思う。マチで良い仕事っていうと「役場、先生、JA」だったら良い仕事という雰囲気があること。親御さんの世代もこれらの仕事であれば地元に戻ってきて仕事をしていいよということ。この価値観って、都会ではわからないけど地域では結構あるあるかなと思う。この価値観がある以上は、地域に戻りづらいし、そもそも、「よい仕事」といわれるお仕事につかない限り戻ることはでない。ただし、それって自分の子どもたちに安定的なお仕事についてもらいたい親心であるのはよくわかるけど。

●好きを仕事にできる環境というのは

ということで、羽後町では未来の子どもたちに対して、新しい良い仕事を作り上げることのできる能力を高めることができる環境+その新しいチャレンジを応援できる環境としてマチを一つの学校に見立てた「うごまち未来の学校」を地方創生事業の一環として取り組んでいる。

例えば、「しごとーいうご」では小学生の職業体験として、町の大人たちが先生となって、まちにある仕事を子どもたちに体験してもらう。会場内は”こどものまち”。中高生・一般のボランティアがおとにゃん、おトナカイに変身して子どもの成長を見守る。今回参加は109名、実行委員・ボランティア100名が楽しみました!小学生の問いはTOICAで記録。子どもたちに主体的な職業選択と価値を見出してもらう。大人たちは子どもたちをサポートすることで自分たちの仕事というのを見直すことができる。

日本語語学取得に興味関心のある、タイ・カセサート大学から3名受入れ。高校生との交流を行ったり、農業について道の駅で学ぶなど、羽後町での生き方を学ぶ。外国人留学生にとっては日本での生活を実際学ぶことができる。また、羽後町の方にとっては、異文化コミュニケーションを普段から接することで外国人への抵抗を少なくすることと多文化理解につなげることができる。

また、町民自身が自分たちの目線で今起きていることを発信していくためにはどうればよいか、情報を伝えたい誰かに伝える能力「編集力」を高めて、住民主体での情報発信をする取り組みなども行う。具体的には、 各小中学校に出向いての出張講座や、地元ラジオ局の番組、広報誌、WEBサイトづくりなど。

町内4社で5名を1か月間受入れ。企業活動に従事する事、地域に滞在する事で受入れ企業と地域との関係性を深める。インターンに参加された方のアイデアは、そのまま、企業が活用し、地域おこし協力隊がそのプログラムを設計・コーディネートを行う。

15,000人規模の一地方自治体で、これほど全町あげてのキャリア教育を行っている自治体をみたことがない。2018年度後半にかけても様々なコンテンツのリリースされる予定とのこと。すごいぞ羽後町。ひとつひとつの取り組みについては羽後町のHPに掲載がありますので、是非にご覧いただければなと思います。

とはいえ、必ずしも「うごまち未来の学校」事業のすべてが順調というわけではない。今年から実施する住民参加型のローカルメディアを立ち上げたときに「誰が?」記事を書くのかということ。折角メディアを立ち上げたとしてもマチの人が記事を書かないと意味が全くなくなってしまう。例えばですが、WEBになれていない人が記事を書くということに対して抵抗はないだろうか?では、その抵抗感をなくすためにどのようなプロセスを設計すればよいだろうか。

また、若い人たちが集まれる場所がないという問題。空き家とかあるんじゃないの?って思われるかもしれません。確かにあると思います。けど、自分の高校生の時とか今の子どもたちの感覚を大事にしたときにどのような場がよいのだろうかちゃんと考えないと意味ないことになるかもしれない(使われない状態)。だからこそ、中学生、高校生も含めて考える必要があると思うし、こういう場が欲しいというアイデアからのバックキャスティングが大事なんじゃないかな。

●自分事として羽後町のことを深堀りしてみる
佐藤からは熱のこもったプレゼンの後は、羽後町が抱えている課題について考えるワークショップを行いました。毎回、ワークショップデザイナーの西村さんにお願いしているのですが、今回の参加者の数にびっくり(西村さんの想定した人数より多かったらしい。)したとのこと。笑

まずは、アイスブレイクとして二人組で「自己」紹介から。今回は一つだけポイントを追加して、自分が記者になったとしてお隣の方に「どんな人か・特技・仕事以外でやりたいこと」を取材をします。

そして、取材した内容をグループで「他己」紹介します。自分がどのようにみられているのか、また、取材した方がどのような方なのか40秒でまとめて発表するのは結構難しい。


この段階で、場の温度はかなり高くなってきています。殆どの方がはじめましての方たち。隣の方がどのような方なのかいろいろとヒアリングをしながら紹介してきます。次のワークは、実際に自分が社会派記者として羽後町が抱える課題についての取材です。

・外国人が泊まる場所がない
・若者が集まる場所がない


に対して「どのような質問」を「当事者」から聞けば問題の核心や解決への糸口となるか思いつく限り書き出します。そして、実際に羽後町の方に聞いてみます。今回2つのグループに分けましたが、1つのグループが羽後町の方に質問して、もうひとつのグループがその質問事項や回答を、また、自分が思ったことや感じたことをひたすらメモをとります。ワークショップでおこなわれるフィッシュボウル方式です。



他のグループが質問する内容から気づき(自覚・洞察)を得ることができます。とはいえ、質問される側はどのような質問がくるのか事前に情報がないので、回答するのも大変。参加者の皆様、各テーマについて質問責めにしています。きわどい質問もあり回答が難しいこともありつつも、みなさんが考えていることを深堀していきます。各グループで取材した内容をもとに他のグループが質問していた内容をチームで共有し、羽後町の抱える2つの課題についての問題点や課題を出し合い解決に向けたプロセスを導きます。


グループでの話し合いにより、それぞれのアイデアに連鎖が生まれてきます。参加者の暗黙知が発散されひとつのアイデアとしてデザインされていきます。

ひとつのグループでは、外国人泊まる場所について考察をしたときに「ターゲットを明確化」するということが優先すべきでなかろうかと。例えば、秋田県の場所って世界地図を横に見てみるとパリであったりニューヨークだったり世界的な都市につながります。また、秋田弁のフランス語と似ているかもということでフランスの方を対象としたプログラムを実際に組んでみるというのはどうかというのと、町の人がもっと外国の方と交流がとれるようにしたり、町ごと民泊施設としてやっていくのはどうかなどお話がありました。

若い人が集まる場については、集まる場ということに対して具体的にどのようなビジョンを描くのかが大事なのではということから始まり、行政と民間が連携した形で、実際に高校生や中学生の声を目安箱的な形で集めてみる。そこから世代間交流を含めて何を求めているのかというのがみえてくるのではないかなぁという現実的な発表がありました。

どちらのグループにしても、マーケティング的な考え方やコミュニケーションデザイン的な考え方というのが羽後町の課題に対して大事なのではないかということ。ターゲットの明確化や課題の本質の洗い出し、そして、集合知に基づいて課題に対しての具体的なアイデアやプロセスについて発表されました。最後に佐藤さんより具体的な形や本質的なところについてご提案について感謝する旨、そして、実際に羽後町でどのように展開できるか考えていきたいとの総括がありました。

◎まとめ
今回の蔵前ローカルラウンジでは、秋田県羽後町さんという東京で生活している限り、なかなかご縁のない自治体について語り合いました。しかし、私たちが思っている以上に将来の子どもたちに対して「うごまち未来の学校」をはじめとして様々な活動をおこなっていること、そして、プロジェクトチームを中心に新しい視点を取り入れて改善させていこうとしていることがよくわかった。私自身、シティプロモーションのお仕事をさせていただき、自治体が総合戦略等で掲げる取り組みについて継続的にPDCAサイクルをまわして進めていくということが難しいというのはよくある。

羽後町の場合は、この循環を内から外から底上げしていこう、もし、やりたいことがあったらやってみてそこで考えてみようという前向きな気質を感じることができた。私たちが今すぐに羽後町に行って何かサポートすることは難しいかもしれない。しかし、今回のイベントに参加して、羽後町のことをちょっとでも好きになってもらったり、ソーシャルメディアを通して発信をする方が増えるなど小さなファンを大切にしていくことが大事だと思う。

ということで、来年の1月26日~27日に地域の方に地元を案内してもらうツアーを開催します。今回は20~40代の独身者に限定となりますが、冬の一大イベント「ゆきとぴあ七曲」に参加いたします。また、1月21日には蔵前ローカルラウンジとして羽後町2回目を開催いたします。こちらはすでに何を食べるかは決まってます。「セリナイト」として、羽後町界隈のおいしい食材をご用意してみなさんで語り合いましょう。おたのしみにしていてくださいね。

■「蔵前Local Lounge」とは
単一の地方自治体では継続的に実施することが難しい東京でのプロモーション活動の一環として、自治体の担当者が、地域の現状や課題を来場者に対してプレゼンテーションを行い、来場者と共にワークショップを通じて語り合い、地域内では生まれにくいアイデアやプロセスを導き地域課題の解決につなげていく語り合いの場。また、毎回、参画した地方自治体の美味しい特産物を「うちのもの」としてご提供し、参加者に対して地域の食文化の豊かさを身近に感じていただく。

■地域と世界をつなぐゲストハウス「Little Japan」
Guest House + Cafe/Bar + Design Office
東京都台東区浅草橋3-10-8
TEL:03-5825-4076
URL: http://www.littlejapan.jp/

■株式会社フラクタル
フラクタルのシティプロモーションは、本来あるべき地域の理想の姿から地域と共にマーケティング戦略を考え、課題解決力のあるコミュニケーションデザインを通じて効果的なプロモーション戦術を構築します。
東京都台東区蔵前1 -7-7 アイランドビル7F
TEL: 03-3866-1938
URL: http://www.fractale.co.jp/

蔵前ローカルラウンジ担当:菅野 秀和(カンノ ヒデカツ)
福島県郡山市出身。東日本大震災を契機に地元の為に貢献できることは?という命題のもと、地域活性化コンサル会社や農業ベンチャーにて実際に地域に移住しつつ業務を行う。2017年10月より株式会社フラクタルのシティプロモーション担当として、全国の自治体に対してコミュニケーションデザインを通じた地域課題の解決への取り組みや都市部での地域魅力を伝えるために奔走中。

(本件に関するお問い合わせ先)
株式会社フラクタル
コミュニケーションデザインユニット
シティプロモーション担当:菅野 秀和
Mail:h.kanno@fractale.co.jp


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