【ふくしまイノベびと】未来をつくる「幸福の花」を届けるイノベびと(前編)

ひと しごと もの こと ~かつらお胡蝶蘭合同会社 杉下博澄(38歳)~
2019-01-17

胡蝶蘭の花言葉をご存じだろうか。

「清純」「幸福が飛んでくる」

お祝い事の贈答品で人気の胡蝶蘭。その容姿端麗な姿は、送る側も送られる側も幸せな気持ちになる。私は、生まれ故郷である福島県で胡蝶蘭を生産していることを知らなかった。それも、平成28年6月まで避難指示のあった葛尾村で。

震災後の避難指示の影響で人口減少が進む葛尾村。震災をきっかけに生まれ故郷をなんとかしたいという思いから、避難指示解除後に新しい産業を立ち上げ、人々に希望の花を届けるイノベ人がいる。かつらお胡蝶蘭合同会社の杉下博澄さん(38歳)だ。

「まっすぐにしか生きることができなんですよね。」

杉下さんは、少し恥ずかしそうに語った。

私たちは、福島イノベーションコースト構想の一環として、浜通りで表舞台に立たなくても地元のために一生懸命汗をかいて頑張っている方を取材していた。これまでに何人もの方を取材させていただき、その取り組みに対する想いやこれからについて語っていただいた。いま取り組んでいる仕事を大事にしつつ、地元の未来のために頑張っている姿は大変魅力的だ。私は、未来という言葉を使うとき思うことがある。それは、その未来に希望があるかだ。

東日本大震災により福島県は未曽有の被害を受けた。たくさんの辛い経験もした。頑張ったのにどうしようもことないことも経験した。一生懸命頑張ったのに報われないこともあった。そのような行き場のない思いや経験を通じて「未来をつくる」という思いに至るまで多くの困難があったことを想像するに難しくない。

けど、杉下さんはあきらめなかった。

生まれ育った葛尾村の未来をもう一度つくるということに。

葛尾村は、もともとは葉タバコや養蚕業などの第一次産業が盛んなところであった。いきなり新しいことをするのは難しい。今まで行ってきた、経験してきたことをベースにできることは何かと考えたときにひとつの答えが胡蝶蘭だった。

今回、福島県立原町高等学校の吉村侑果さんと若盛霞さんと一緒に杉下さんの栽培施設を取材させてもらった。杉下さんは、私たちにわが子を自慢するように、そして、ひとつひとつ丁寧にやさしくお話をしてくれた。それは、このホープホワイトという品種の胡蝶蘭を通じて、これからの世代である高校生たちに希望を伝えるように。

(後編へつづく)

●かつらお胡蝶蘭合同会社
葛尾村の農業再生に向け、新たな価値創出に向け意欲を燃やす3農家・1企業が集まり、2018年1月より胡蝶蘭の栽培を開始。現在、県内だけでなく大田市場など首都圏への出荷もされ、品質が高く評価されている。

(文:株式会社フラクタル 菅野秀和)

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