【ふくしまイノベびと】福島イノベーション・コースト構想をゼロから支えるイノベびと(前編)

ひと しごと もの こと ~福島県企画調整部企画調整課 課長 吉田 和史(38歳)~
2019-01-15

◎「福島イノベーション・コースト構想」

福島県浜通りを中心に、ロボット・再生可能エネルギー・農林水産業など新しいテクノロジーを活用しつつ、新たな産業基盤を構築していこうという国家プロジェクトである。このプロジェクトを通じて、浜通りの産業集積・人材育成・交流人口の拡大などのプロジェクトを推進させている。そして、少しずつではあるが新しい芽がでつつある。

福島イノベーション・コースト構想全体図


しかし、この福島イノベーション・コースト構想をどのくらいの方がご存知だろうか。個人的な感覚になるが、何か難しいことをやっているのでは、また、先端技術やロボットと聞いて自分とは関係ないと思う方も多いのではないだろうか。

確かに、福島イノベーション・コースト構想が取り組むプロジェクト自体は、私たちの生活に馴染みの薄いものが多い。このプロジェクトを多くの方に認識してもらうためにはどうすればよいだろうか。

私たちが考えた答えのひとつとして、福島イノベーション・コースト構想の事業も含めて、この浜通りで一生懸命に日々の業務を行う「人」、ふくしまの未来を支えていこうという「志」を持っている人たちにもっとフォーカスを当てるべきなのではと。表舞台には出ることはないかもしれないが、この「志」を持つ方の想いを共有することで、福島イノベーション・コースト構想を身近に感じてもらえるのではないだろうか。

今回、この福島イノベーション・コースト構想を支える10人を「イノベびと」として、現在の取り組みや将来の夢などを取材した。対象者は、先端技術・エネルギー・農業・人材育成などに取り組むイノベびとだ。彼らの取り組みや人間性を通じてこの福島イノベーション・コースト構想に少しでも興味を持ってくれたら嬉しい。

◎福島イノベーション・コースト構想を立ち上げるということ。

福島イノベーション・コースト構想の中心となる福島県浜通り地域は、津波や原子力災害の影響が大きかった地域だ。この浜通りを新しい産業を通じて希望と活気をもたらすことが出来るのではないだろうかと、福島イノベーション・コースト構想の立ち上げから参画しているイノベびとがいる。

福島県企画調整部企画調整課課長の吉田和史さん(38歳)だ。この福島イノベーション・コースト構想をゼロから現在まで支えてきたイノベびとだ。

私たちは、吉田さんを取材するために南相馬市の復興工業団地にある福島ロボットテストフィールドで待ち合わせをした。この施設は、陸海空のフィールドロボットを主対象として、様々な実証実験のできる世界に類を見ない一大研究開発拠点だ。2018年度から順次開所予定であり、今回は、平時・災害時の点検・情報収集・機器操作に関する試験や操縦訓練を行う試験用プラントで取材した。

この福島イノベーション・コースト構想の担当者である吉田さんとはどんな方なのだろう。難しい先端技術のお話をされたら大丈夫だろうかと不安だった。

そんな私たちの不安をすぐに払しょくされた。

これまでの取り組みについて誰でもわかるように丁寧にお話をしてくれた。そして、私たちの質問に対して、笑顔を交えながらお話する姿が印象的だった。

「数年前まで、こんな施設がここに出来るなんて夢のまた夢だったんですよ。」

福島ロボットテストフィールドを案内する吉田さんは微笑みながら語った。この施設のある南相馬市も津波の被害を受けたところだ。


福島ロボットテストフィールド全体図


この土地に新しい産業基盤をつくるために、被災された方の想いを受け入れつつ、そして、未来をつくるためにどうすればよいか、越えなければならないハードルはたくさんあったはずだ。

この福島ロボットテストフィールド含めて福島イノベーション・コースト構想を実現させていくためには並大抵な努力ではできなかったはずだ。しかし、吉田さんは、そのような様子は見せずにひとつひとつお話をしてくれた。

「行政の仕事って、多くの方の意見を聞きつつ、その意見を取り入れるだけではなくて、より良い形に調整していくスペシャリストだと思うんです。」

多くの方が関係するこの福島イノベーション・コースト構想を取りまとめるためには、関係者同士の想いがぶつかる時もあるだろう。


吉田さんと同企画調整課福島イノベーション・コースト構想推進室の橋本さん


強い想いをより良い方向に導くためには相当なバランス感覚が求められる。そして、この構想が立ち上がり現在に至るまで、そのバランス感覚を維持していくのは決して簡単ことではないと思う。様々な事項を調整し同時進行でやり遂げるその原動力はなんだろう。次回、吉田さんの福島イノベーション・コースト構想に関する想いやこれからについて高校生のインタビューを通じてもう少し掘り下げてみたい。

◆福島イノベーション・コースト構想
福島イノベーション・コースト構想は、東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業を回復するため、当該地域の新たな産業基盤の構築を目指すものです。廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産等の分野におけるプロジェクトの具体化を進めるとともに、産業集積や人材育成、交流人口の拡大等に取り組んでいます。
URL:http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list275-1006.html


◆福島ロボットテストフィールド
物流・インフラ点検・大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸海空のフィールドロボットを主対象に、実施の使用環境を拠点内で再現しながら研究開発、実証実験、性能評価、操縦訓練を行うことができる、世界に類を見ない一大研究開発拠点です。本拠点は、南相馬市・復興工業団地内の東西約1000m、南北500mの敷地内に「無人航空機エリア」、「インフラ点検・災害対応エリア」、「水中・水上ロボットエリア」、「開発基盤エリア」を設けるとともに、浪江町・棚塩産業団地内に長距離飛行試験のための滑走路を整備する計画であり、2018年度以降順次開所を予定しています。
URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/robot/

(文:株式会社フラクタル 菅野秀和)

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