【ふくしまイノベびと】福島イノベーション・コースト構想をゼロから支えるイノベびと(後編)

ひと しごと もの こと ~福島県企画調整部企画調整課課長 吉田和史(38歳)~
2019-01-16

福島ロボットテストフィールから場所をかえて、地元の高校生が吉田さんにインタビューを行うことになっていた。福島に着任してから取り組んできたこと、浜通りの未来について、そして、プライベートなことなど。今回、インタビューを行うのは、地元の福島県立相馬高等学校の沖沢優希子さんだ。私たちが取材したときと同じようにわかりやすくお話をする吉田さん。地元の高校生だからこそ感じていること、そして、福島イノベーション・コースト構想をゼロから立ち上げ、支えてきたからこそ見えてきたこと。2つの立場から福島イノベーション・コースト構想について話し合ってもらった。

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沖沢さんが知人との会話の中で生まれた1つの質問があった。

南相馬市にある福島ロボットテストフィールドは、ロボットの実験を行う場所というのは知っているが、本当に新しい企業が参入してくるのかと。

福島イノベーション・コースト構想は、この浜通り地域等にロボット・再生可能エネルギー・農林水産業など新しいテクノロジーを活用して、新たな産業基盤を構築していこうとする国家プロジェクト。現在、推進している様々なプロジェクトがひとつひとつ形になりつつある。

地元の方は、この福島イノベーション・コースト構想をどのように思っているのだろう。仮に、地元の方が福島イノベーション・コースト構想を理解できず、この構想が生活の中に浸透しなかった場合、構想が掲げる理想的な未来と地元の方の生活は乖離した形になってしまうのではないだろうか。

だからこそ、現在進めているプロジェクトを多くの方に知ってもらいたい。吉田さんは沖沢さんにどのように伝えようか言葉を選びながら話をしていたのが印象的だった。

「知られていないかもしれないですけど、ドローンが飛んでいることに違和感を感じないエリアって他にないんです。」

現在、ドローンの使用に関しては安全面含めて様々な制限が設けられている。しかし、将来的には社会問題の解決に期待されているのも事実だ。このドローンを安全かつ社会問題の解決に活用するためにどのようなルールを設けていけばよいのか、また、その運用に関して実証実験をどこで行えばよいのか。私たちが最初に訪問した福島ロボットテストフィールドが、まさに、ドローン含めてロボットの実証実験ができる場所として期待され、2018年度以降順次開所されているのだ。


2017年10月に南相馬市でコンビニから商品を配送する実験を始めたというニュースがあった。この浜通りから新しいイノベーションが起きている事例の1つだ。普段の生活では気づかないかもしれないが、このような最先端の実証実験が行われている地域は他に無いだろう。

この浜通りが世界的にも先端技術が集積したまちになりつつあるのだ。

しかし、沖沢さんから吉田さんへの質問というのは、地元に生活する方にとって構想の取り組みというのがあまり実感がなかったからかもしれない。

「年間4,000人の方がこの浜通りで様々な研究をおこない、そして、15の法人が新たに営業所を設けた。多くの方が訪れることにより、飲食店や宿泊先が必要になる。そして、まちに活気が生まれてくる。今はまだ身近に感じることができないこのプロジェクトも少しずつだけど生活に浸透し実感してもらいたい。」

自分事として実感するにはもう少し時間がかかるかもしれない。ゆっくりでも良いから、この構想は地元の方と一緒に取り組んでいかないといけないと吉田さんは話す。

福島イノベーションコースト構想の担当者として、日々多忙な業務に取り組む吉田さん。担当者として様々な事項を調整し同時進行で実現させていく熱量はどこにあるのだろうか。今回のインタビューを通じて私の疑問にひとつの答えがみえた気がする。

吉田さんの原動力は、地元の方と一緒に世界が驚く福島の復興を実現したいという熱いを想いなのだと。吉田さんの福島イノベーション・コースト構想に対する熱い想いというのは、地元の方たちがこの構想を理解し生活に浸透していくためにはこれからも必要だろう。そして、ひとりひとりがこの構想に対して誇りをもったときには世界が驚く福島として注目されるはずだ。

最後に、私が東京の知人にどこの地域が面白いかって聞かれたら、間違いなくこう答えるだろう。

「浜通り」が面白いと。

◆福島イノベーションコースト構想
福島イノベーション・コースト構想は、東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業を回復するため、当該地域の新たな産業基盤の構築を目指すものです。廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産等の分野におけるプロジェクトの具体化を進めるとともに、産業集積や人材育成、交流人口の拡大等に取り組んでいます。
URL:http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list275-1006.html


◆福島ロボットテストフィールド
物流・インフラ点検・大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、水中探査ロボットといった陸海空のフィールドロボットを主対象に、実施の使用環境を拠点内で再現しながら研究開発、実証実験、性能評価、操縦訓練を行うことができる、世界に類を見ない一大研究開発拠点です。本拠点は、南相馬市・復興工業団地内の東西約1000m、南北500mの敷地内に「無人航空機エリア」、「インフラ点検・災害対応エリア」、「水中・水上ロボットエリア」、「開発基盤エリア」を設けるとともに、浪江町・棚塩産業団地内に長距離飛行試験のための滑走路を整備する計画であり、2018年度以降順次開所を予定しています。
URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/robot/

(文:株式会社フラクタル 菅野秀和)

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