【ふくしまイノベびと】廃炉作業を先端技術で支えるイノベびと

ひと しごと もの こと ~楢葉遠隔技術開発センター 鈴木健太(28歳)~
2019-01-29

インタビューを受けている鈴木さんは穏やかだった。

取材場所である「国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 楢葉遠隔技術開発センター」は、2015年10月19日に開所した福島第一原子力発電所の廃炉作業推進のために遠隔操作機器(ロボット等)の開発及び実証実験等が行うために整備された施設。

今回、取材するのは楢葉遠隔技術開発センターにて、ロボットによるシュミレーションのプログラム開発を行っている鈴木健太さん(28歳)だ。
私は、鈴木さんが具体的にどのような業務を行っているか、先端技術がどのような形で廃炉作業やロボットに活用されているのか、また、この巨大な施設でどのようなことが行われているのか興味を持っていた。

震災からまもなく8年が経過するが、福島第一原子力発電所の廃炉作業は着実に進行している。しかし、安全性を考慮した時にどうしても人間が入れないところがある。そのような環境で活躍するのがロボットであるということ。このような過酷な環境中で作業を行うロボットというのは、様々な技術等を取り入れた1点ものであることが多い。この大事なロボットの実証実験を行わず、現場に導入し、現場の中で使用不可になってしまった場合、費用的なところ時間的なところ含めて大きなロスが生じてしまう。

この施設では、廃炉作業を行うロボットの開発含め廃炉作業の作業計画検討や作業者訓練等に活用可能なVR(バーチャルリアリティ)システム、ロボットシミュレータ等の設備を備えている。実際に現場で稼働させて問題ないか含めて検証することができるのである。そして、廃炉作業含めて研究開発を行っている方に対して実験環境の外部貸出も積極的に行っているとのことである。

今回インタビューを行った高校生にもわかるようにと、専門用語ではなく極力わかりやすい言葉で説明をする鈴木さんの姿が印象的だった。

鈴木さんは、この仕事に対してどのような想いで取り組んでいるのだろう。

「自分がこれまで学んできたスキルを活かせる仕事に就きたかった。」

震災発生時は、いわき市にある福島工業高等専門学校で機械や電気を専攻していた。その後、大学から大学院に進学し、卒業のタイミングで楢葉町にこの施設が立ち上がるという話を聞いたという。

施設の名前の通り、原子力に関する知識については学んでいく必要はあるが、廃炉に向けたロボットの技術が必要ということで、ロボットを動かすためのプログラミングやシミュレータなどの自分のスキルが活かせると思ったことが大きいという。

「生まれ育った福島という土地に愛着があります。」

静かに強い想いを込めて話す。

生まれ育った浜通りは、震災と原子力事故により大変な被害を受けた。どのような形であれ、自分が福島に対してできることがあるのではないか。この楢葉遠隔技術開発センターを通じて廃炉を進める方々のバックアップを行う縁の下の力持ちのような存在として、廃炉を少しでも短く終わらせることができればと鈴木さんは語る。

「地元への想い」

その瞬間、鈴木さんをとりまく穏やかな空気感に少し熱を感じた。

インタビュー後、鈴木さんに楢葉遠隔技術開発センターの試験棟及び研究管理棟を案内してもらった。そして、研究管理棟にてVRシステムを体験させてもらった。このVRシステムは、福島第一原子力発電所の原子炉建屋内(模擬空間)にいるような感覚で作業計画や訓練を行うことができるのだ。結果として、廃炉作業の効率化や作業員の被ばくを低減させるように活用することができるという。

インタビュー時のやわらかな印象と異なり、モニターを見つめる姿は仕事人として格好良い。なによりマウスを動かす手の動きにプロとしてのしなやかさを感じる。

私も体験させていただいたが、3面をモニターで囲まれた空間のため、まさにその場所に「いる」ような感覚に陥る。普段の生活のなかで、VRゴーグルなどで動画等を見る機会はあるが、ここまで全身が没入するような感じは経験したことがなかった。私に限らず取材を行った高校生も同じように驚いていた。

多くの方が関わる福島第一原子力発電所の廃炉作業は、これからもたくさんの困難が待ち受けているだろう。ただし、その作業を短縮させようと縁の下で支えている人たちもたくさんいるということも事実だ。ふるさとの復興のために難しいこと、新しいことを行うのではなく、自分のスキルを活かして仕事の中から支えていく。静かに胸に秘めた地元への熱い思いを持つ鈴木さんは、まさに「イノベびと」のひとりである。

●国立研究開発法人日本原子力研究開発機構楢葉遠隔技術開発センター
福島第一原子力発電所の廃炉推進のために遠隔操作機器(ロボット等)の開発実証実験施設として整備された施設。廃炉作業の作業計画検討や作業者訓練等に活用可能なVR(バーチャルリアリティ)システム、ロボットシュミレータ等の設備を備える。廃炉に限らず広く一般利用も可能。

(文:株式会社フラクタル 菅野秀和)

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