【ふくしまイノベびと】サッカー・スポーツの力でいわきの子供たちの未来を創るイノベ人

ひと しごと もの こと ~いわきFC COO兼セールス&マーケティング本部長 岩清水 銀士朗(30歳)~
2019-02-19

福島県浜通りの南部に位置し、東北地方では仙台市に次いで2番目の人口の多い「いわき市」。このまちも東日本大震災では被害を受けた地域のひとつだ。東京に住んでいる方には、映画「フラガール」の舞台となったリゾート施設「スパリゾートハワイアンズ」のあるところと言えばイメージが付きやすいかもしれない。

いわき市は、石炭産業を中心に漁業、林業、農業といった第一次産業で栄えてきた。そして、石炭から石油へのエネルギーの転換後は、近隣14自治体が合併し工業化を進めていくようになった。首都圏からの地の利を生かして、現在では、仙台市に次ぐ東北2位の工業製造品出荷額の工業都市である。

私たちは、次の取材先として商業施設複合型クラブハウス「いわきFCパーク」に向かっていた。小高い丘の先に見えてきたのは巨大な物流倉庫。アンダーアーマー日本総代理店となっている株式会社ドームの物流倉庫だ。アンダーアーマーの商品は、この倉庫から日本中の取扱店に出荷されているという。

株式会社ドームでは、東日本大震災における被災地の復興のために継続的な支援をおこなっていた。そして、いわき市では、長期的にスポーツを通じてまちを元気にしようと物流倉庫をつくり雇用を生み出してきた。サッカーを行うために物流倉庫に作ったのではなく、まちがどうすれば元気になるかを考えて立ち上げたのだ。

物流倉庫の隣接しているのが「いわきFCパーク」。いわきFCの活動拠点としてのスポーツファシリティをはじめ、レストラン、アウトレットショップ、トレーニングジムなどが入居している。私たちが訪れた日も地域住民、観光客で賑わいをみせていた。

「サッカーというスポーツの経済的な価値を引き出して、いわきを元気にすることが自分の使命」と語るのは、チームでCOO兼セールス&マーケティング本部長を務める岩清水銀士朗さん(30歳)だ。

学生時代からサッカーの仕事に携わっていきたいという想いがあった。大学卒業後、国内のサッカーチームにて様々な業務をおこない、2016年1月からいわきFCのフロントスタッフとして、チームの立ち上げ時からビジネスサイドで支えてきた。

今回、岩清水さんを取材したのは福島県立相馬高等学校の門馬さんと長階さん。彼女たちの笑顔からもわかるように、とても和やかな空気のなかでインタビューが行われた。高校生からの質問に対して、笑顔を交えながらお話をする岩清水さん。ひとつひとつの想いを丁寧に説明する姿がとても印象的だった。

私たちが取材しているときに、グラウンドでは子供たちを対象とした運動教室が開講されていた。子供たちが元気にグラウンドを走り回る姿に岩清水さんは目を細める。

福島県の子どもたちは原発事故の前からですが、事故の影響により屋外での活動制限がされたことや環境の変化等により、他の地域と比較して子供たちの肥満度が高いと言われている。いわきFCでは、子供たちの運動不足の解消、体を動かすことに喜びを感じてもらうことを目的として運動教室で開催している。

「小学生の教室では、サッカーボールは蹴らないんですよ。」

私は、岩清水さんの言葉に違和感を持った。サッカーチームが子どもたちに対して運動教室を運営をしているのであれば、そのカリキュラムの一つにサッカーを行うものだと。そして、その中で才能ある子供たちを確保してくものだと。

「この運動教室は子供たちの未来への投資です。テクニックや勝ち負けを覚えることが目的ではなく、体を動かすことの喜び、一生懸命に続けることの大切さ、スポーツを通じて自分自身に自信をもってもらうことを大切にしています。」と岩清水さんは語る。

この教室に通う子供たちのお母さんからは、子供たちに集中力や積極性がついてきたとの声をいただいているという。子どもたちの変化に手応えを感じ始めている。

「子供たちにサッカー選手になってもらうことがこの運動教室の目的ではありません。自分の好きなこと、やりたいことに対して没頭してもらえればいい。良い人材になってもらうことが大事です。」

最後に、岩清水さんの将来の夢を描いてもらった。

「いわき市を東北一の都市にする」

いわきFCの地域への取り組みというのは、サッカーに限らず、スポーツを通じて地域の方と共にまちの未来を創っていくということだと思う。経済的・人口数では、仙台市に追いつくためには時間がかかるかもしれない。しかし、これまでの、これからのいわきFCの取り組みを通じて、子供たちがいわき市で生まれたことに対する誇り、好きだという想いについては、いわき市が東北一になるというのは、そう遠い未来ではないかもしれない。

いわきFCの取り組みを通じて人やまちに活気が生まれることができるのであれば、日本全国が、スポーツを通じて元気にすることができるのではないかと岩清水さんは考えている。スポーツにはそれだけの可能性があるから。

まずはいわき市から。

岩清水さんのスポーツを通じてまちの未来を創る挑戦はこれからも続く。

●株式会社いわきスポーツクラブ いわきFC
いわき市をホームとする社会人サッカーチーム。「アンダーアーマー」の日本総代理店である株式会社ドームが復興支援の一環として建設した物流倉庫から構想がスタートし、既成概念を打ち破る新しい発想でチームを運営。いわき市の活性化にも貢献している。

(文:株式会社フラクタル 菅野秀和)


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