【ふくしまイノベびと】ロボットの力で南相馬を健やかな未来へ導くイノベびと

ひと しごと もの こと ~株式会社菊池製作所 南相馬工場 早川 達也(32歳)~
2019-02-21

南相馬の人たちが健やかな暮らしをするためにできること。

株式会社菊池製作所南相馬工場でエンジニアとして活躍している早川達也さん(32歳)。同社のグループ会社であるイノフィス社が開発・販売する、装着すると腰への負担を軽減させる「マッスルスーツ」の製造のほか、介護関係のロボット開発に取り組んでいる。

ロボットの研究開発というと専門的な言葉で多く、理解するのが難しそうだと思っていた。そのような私たちの想いを察したかのように、インタビュー中の早川さんは、私たちの質問に対して笑顔を交えつつ、ゆっくりとわかりやすい言葉で話をしてくれた。

エンジニアとしての早川さんは、地元の病院・高齢者の介護施設からまちの健康教室まで足を運び、実際に現場の方や高齢者の方に試してもらい、その課題等をヒアリングし、商品化に向けて改良を行っている。

「まちのみなさんの笑顔に触れ合いながら試してもらっていると、一緒に作っている感覚が生まれ、仕事に対してやりがいを感じます。」

株式会社菊池製作所のある南相馬市では、東日本大震災、原発事故の影響で人口流出が進行し、急激な少子高齢化が大きな課題となっている。

結果として、地域内労働力の減少、地域経済の縮小、そして、社会保障制度の維持など南相馬市では様々な課題を抱えている。

「介護される側よりも介護する側の負担をどのように軽減させていくかが大事だと思います。」

少子高齢化が進むことで「老老介護」という問題も生じてくる。介護される方も介護するほうも高齢者という状況だ。そもそも、高齢者ではなくても介護をするためには肉体的な負担が大きい。その負担をロボットの力で軽減できないかと早川さんは話す。

インタビューの前に、今回取材を行った福島県立原町高等学校の若盛さんと吉村さんが「マッスルスーツ」を試着させてもらった。

「マッスルスーツを付けているときと付けていないときでは重さの感じ方が全然違う。」

高校生たちは、その重さの感じ方の違いに驚いた様子だった。そして、自分たちが住む南相馬という場所でこのようなロボットが開発されていることにも。

大学時代から電気電子工学を学び、震災後に生まれ故郷である福島に戻ってきた早川さん。一度離れたからこそ、生まれ育ったまちの良さに改めて気づいた。だからこそ、今まで取得してきた知識や経験を生かして地元に貢献したいという。

今後は、介護に至る前の段階、健康的な生活を維持するためのロボットを開発していきたいと早川さんは話す。全国的にも、そして、南相馬市でも介護施設が十分に整っているとはいえない。そして、高齢化が進行するにつれて更に施設が足りなくなってくるはずだ。だからこそ、介護される状態になる前に、自分の健康状態を把握し、改善していくための手伝いをしていきたいという。

早川さんの言葉からは、20年、30年先の福島、南相馬の人たちの健康的で穏やかな未来を創っていきたいという想いが伝わってきた。

早川さんの研究開発するロボットが、社会に広く認知されたときにどんな世界が広がるだろうか。それは、ロボットの力を借りつつ、介護を受ける側、する側が尊重しあえるような、思いやりのある世界ではないだろうか。

いま、一人のエンジニアが課題先進地域から健康的で穏やかな社会の実現に向けて歩み始めている。

<編集後記>
インタビューの最後に原町高等学校の若盛さんから1つ提案があった。

「今回、インタビューに参加して、私たちの住んでいる南相馬で介護ロボットを作っていることを知ることができたが、他のクラスメイトは知る機会がほとんどない。例えば、高校生のボランティアを募集してもっと知ってもらうきっかけがあっても良いのでは。」

高校生目線で感じたことをストレートに早川さんへ問いかけていた。

世代を超えてまちの未来に対して想いがひとつになった瞬間だ。

この小さいな声がたくさん集まることでひとつの形になり、これからの南相馬を支えていく力になっていくだろう。この取材を通じて、そのきっかけが生まれた瞬間に立ち会えたことに私たちは強い感動を覚えた。

●株式会社菊池製作所 南相馬工場
飯館村に主力工場を置き、開発・試作・量産を全て社内で行う一括・一貫体制の機械メーカー。2016年から稼働している南相馬工場では「マッスルスーツ」などの先端ロボットの受託製造や、ドローンなどの研究開発にも着手している。

(文:株式会社フラクタル 菅野秀和)

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