【ふくしまイノベびと】浪江町から世界に羽ばたく子供たちを支えるイノベびと

ひと しごと もの こと ~浪江町立なみえ創成小学校・中学校 ALT(外国語指導助手)カイパー・ジョシュア・ジェームズ(23歳)~
2019-02-22

今回の取材先は、浪江町立なみえ創成小学校・中学校のALT(外国語指導補助手)として英語を教えるカイパー・ジョシュア・ジェームズ(23歳)さん。町で唯一の外国人だ。

私は、ジョシュア先生とお話をするうちに、日本人と会話しているような感覚に陥った。

「村上春樹や夏目漱石などがきっかけで日本に興味を持ち、もっと深く知りたいと思った。」

ジョシュア先生が日本を好きになったきっかけ、それは、日本文学に親しみを持ったから。アメリカのフロリダ州の出身で、言語学に興味があり、言葉による交流が好きだった学生時代。いずれは、英語教師になりたいと思っていたという。

大学生の時に金沢・名古屋での留学経験を経て、2018年8月から浪江町のALTとして着任した。浪江町のことは、インターネットを通じて東日本大震災や原発事故により大きな被害があったことは知っていた。それでも、まちの現在の状況など、情報が少ないと感じていた。また、限られた情報のなかで、ジョシュア先生のご両親は、息子が浪江町に着任することで、放射能の影響がないか心配していたという。

このような状況の中で、ジョシュア先生も浪江町に着任することに対して不安はあったという。

震災から8年を経過しようとしているが、日々、福島のポジティブ・ネガティブな情報が発信されている。どの情報が正しいのか日本に住んでいる私たちでも判断に困ることがあるのも事実だ。

しかし、着任してその不安は払しょくされたという。

今回、インタビューを行った福島県立相馬高等学校の門馬さん、山本さんから、ジョシュア先生に実際に浪江町に住んでみた感想について質問があった。

「聞いていた情報より浪江町は「いい(良い)場所」で「いばしょ(居場所)」です。」

ジョシュア先生のユーモアなのかわからなかったが、私たち取材スタッフから笑いが生まれた。

「世界から日本人はやさしいと言われているけど、福島、浪江のみなさんは自分のためにいつも優しく接してくれます。」

優しい笑顔と丁寧な日本語で話すジョシュア先生。

インタビューの前に、なみえ創成中学校の半杭校長先生とお話する機会があった。先生のお話によると、ジョシュア先生は、ALTでの活動の他にも地域の活動に積極的に参加しているとのことだ。

例えば、地元の警察署から依頼があり、浪江町に外国人観光客が増えてきているが、どのように職務質問をすればよいかわからないとのことで、警察官を対象とした英語のレクチャーを行ったという。また、まちの人が企画する英会話教室やウクレレ教室に招かれるなど、浪江町に住んで半年も経っていないが、町の人気者となっているという。

「そんなことありません。」

ジョシュア先生から発せられる言葉には、私たち日本人以上に日本語を大事にしているように感じた。ジョシュア先生から奥ゆかしさ、謙虚さを感じるのは人柄によるものだろうか。

高校生からひとつの質問があった。

ジョシュア先生から浜通りの中学生・高校生に伝えたいこと。

「将来的には、もっと英語をお話できるようになってもらいたい。言葉を通じてもっと交流をできるようになってもらいたいですね。」

休日も日本語の勉強や読書を楽しむジョシュア先生。言葉を知るということは、単なるコミュニケーションを取るためのツールとして習得するだけではなく、その言葉の背景にある文化を知るということにもつながる。子供たちに対して、言葉を通じた新しい価値観を習得する喜びを知ってもらいたいのだろう。

最後に将来の夢について聞いてみた。

「Leave a better world for the next generation」

今回の取材を通じて、日本文学を通じて日本語を大事に、そして、言葉を通じてお互いの考え方や価値観を分かち合いたいと自然体に向き合うジョシュア先生。そのまっすぐな姿勢に、浪江町のひとたちからも好感をもたれていることが良くわかった。震災後、新しい歴史を刻み始めたこの浪江町で、次の世代のために小さな動きがひとつひとつ進み始めている。

●浪江町立なみえ創成小学校・中学校
2017年3月末に帰宅困難区域を除いて避難指示が解除された浪江町に2018年4月に開校した。2018年12月末現在、町民登録されている小中学生約1,200人の1%に満たないものの、10人の児童・生徒が元気に登校する。
(文:株式会社フラクタル 菅野秀和)

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